約1年半の時を経て見たそれは、意外とあっさりしていた。数時間あるライブの中の、僅か1~2分間の出来事。当時の自分には、それが5分にも10分にも、永遠にも感じられた。あの時は、目の前で起こっている異常事態に、ただ立ち尽くすしか出来なかったけど。僕は今になってやっと、記憶の中で伝説として肥大化していたそれを、直視できるようになった。
あの出来事に、何故あそこまで心が打ちのめされたのか色々*1と理由がある。そのどれもが納得に値する。でも、それは今だから言える事であって、あの時間、あの場所で僕が感じていた事は多分、そうじゃない。もっと心はぐちゃぐちゃだった。成功した時の感動だけではなかった筈だ。17000人の観衆を前にする重圧、無音のステージに演者が放り出される恐怖や不安、『アイドル』というヴェールが剥がれ落ちた極限状態の人間を目の当たりにする辛さ。僕が感じたのは、その全てが自分の中に一斉に流れ込んでくる感覚だ。とても、受け止めきれない。そして恐らく、こんな体験はもう一生味わえない。だから、こんなに自分の中で大切になってるんだ。
アイドルとは綺麗な存在だ。僕らは、ステージの上で演じられている『アイドルとしての彼女達』を見ることしか出来ない。人間としての綺麗な部分にしか、僕らは触れられない。故に、美しいし憧れる。でも、だからこそ、その演技が崩れ去る瞬間に、僕は惹かれてしまうのかもしれない。あの場面のような、『アイドルとしての自分』を演じる余裕の無い極限状態は、否応なくアイドルを人間にしてしまう。ステージの上で剥き出しになる、アイドルの人間性にこそ、本当の意味で僕の心を動かす力が宿るのだろう。
アイドルの流す涙が好きだ。自分の中で渦を巻いている感情が抑えきれずに、演じていた『アイドルとしての自分』が少しだけ綻ぶ、あの瞬間が。どれだけステージの上のアイドルが、アイドルを演じていようと、涙という生理現象だけは嘘じゃないと、僕は信じていたい。アイドルが胸に秘めている不安を吐露する瞬間が好きだ。人々の理想で作られたアイドルという存在が、時折こちらに見せてくれる弱さが。穢れのない真っ白なアイドルと、それに似つかわしくないグレーな色の感情のギャップが、僕は好きなんだ、多分。
そんな事を思ってました。見て良かった。次はまたお金貯めて、2ndのブルーレイ買おう。
買っちゃったぜ~ pic.twitter.com/hpBMxxMlrR
— きうい (@kiui_4) 2018年10月12日