ギャン・バギャム・ソルドン

一打粉砕に怒喝の心力を込め、万物を叩き割る剛剣の刃を生み出さん

『The One and Only』と長瀬琴乃の物語について

こんにちは、きうです。アプリのリリース1周年を記念して寄せます。

皆さんはIDOLY PRIDEの楽曲『The One and Only』は好きでしょうか。私は好きです。アニメの放送終了から既に1年以上が経っていますが、アニメを見直す度に、イベントでパフォーマンスを見る度にどんどん好きになっていく自分が居ます。それは恐らく、この『The One and Only』という楽曲がアニメ11話、ひいてはアニメの中で月のテンペストが歩んできた道のりと深く関わっているからでしょう。この記事はそんな『The One and Only』を、その歌詞とアニメ11話の内容を絡めて語る記事になっています。

それでは本題です。

一番側にいた 君がいてくれた 迷いない笑顔の理由 月の光(琴乃)

IDOLY PRIDEの世界の月の満ち欠けは、琴乃の心の機微と切っても切れない関係にあります。琴乃が麻奈という枷を振り切った後、満を持してステージに顕現する満月の美しさに、涙するところから楽曲が始まります。
一番側にいた君、誰なのでしょう。琴乃から見た月ストの皆なのか、さくらのことなのか、麻奈のことなのか、はたまた月そのものを指しているのか。誰にも分かりません。ただ確かなことは、月が満ち、長瀬琴乃の目指すアイドル像がハッキリとした今、その笑顔の中には曇りがないということです。今までで一番優しそうな表情をしていて、月の光のような柔らかさを感じさせます。


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もう謝らないでね 誰のせいでもない かけ違いの言葉も『大丈夫』(すず)

Aパートの歌詞をよく読んでみると、想像以上に物語の核心に触れているなと感じます。Next Venusグランプリ決勝の前日、自分の言葉で麻奈を傷付けてしまった琴乃の中には大きな後悔が生まれました。何度謝ってもその後悔は消えるものではなく、それはずっと尾を引いて一生心に残る傷跡になることでしょう。その傷跡にそっと寄り添って『もう大丈夫なんだよ』と言ってあげる、確かな慰めの言葉です。

優しさ思いやりはいつか 大切な心に届くよ(渚)

アニメ11話の印象的な場面の一つとして、琴乃が小屋で幽霊の麻奈に向かって独白をするシーンがあります。このシーンの琴乃は『謝りたいこと沢山ある』と言っていますが、実際に麻奈と言葉を交わすことはしませんでした。ここから、もし仮に麻奈がここに居るとしても、いま謝ることで楽になってはいけないんだという琴乃の強い覚悟が見て取れます。その覚悟は不器用な琴乃なりのけじめであると同時に、最大限の麻奈に対する思いやりなのだと思います。それが伝わってるよと、『琴乃ちゃんの優しさを麻奈ちゃんは分かってくれているはずだよ』と言ってあげるんです。渚が、言ってあげるんです。

この地球の唯一の衛星(芽衣) そんな風にずっと一緒に輝こう(沙季)

すずとなぎさがAパートで琴乃に優しい言葉を投げかけていたのとは裏腹に、急に月の話を始めるのが特徴的なBパートの芽衣のフレーズです。というのも、芽衣は初期の月ストのストイック過ぎる空気を変える為に加入したという経緯があり*1、月ストの中に一石を投じる役割がこの子にはあるように思います。特にアニメ楽曲である『月下儚美』と、この『The One and Only』は芽衣の担当するフレーズが印象に残りやすく、その通った歌声からは芽衣らしい流れを変える力と自由さを感じさせます。それは芽衣の持つ役割の裏返しなのかもしれません。

空を越えて 大気も超えて 見たことのない未来を目指せ 唯一無二の光

君がいるから私でいいんだ 誰かの真似じゃない自分の場所探せ

TVアニメIDOLY PRIDE はマクロな視点から見ると麻奈、さくら、琴乃を中心とした因果を描いた物語ですが、その中には琴乃が麻奈の呪縛から解き放たれていく、唯一無二のアイドル性を獲得していく話が一つ存在します。『The One and Only』の意味でもある唯一無二という言葉は、そんな長瀬琴乃の物語を象徴したフレーズだと思います。
君とは誰なのでしょう。アニメ8話で琴乃に歌う目的を与えてくれた月ストの皆なのか、お姉ちゃんが残した曲をステージで歌うという、呪いにもなり得る目標を預かってくれたさくらなのか、はたまた月そのものなのか。これも誰にも分かりません。ただ確かなことは、月ストの皆やさくらが居てくれたからこそ、琴乃は長瀬麻奈の妹としてではなく、月のテンペストの長瀬琴乃として今もこうして振る舞えているということです。

楽しみあげたい 笑顔でありたい 迷いない歌声の理由 月の光

もっともっとアイドルのことを好きになって、もっともっと沢山の人に楽しんでもらうという、琴乃の目指していくアイドル像をそのまま表した言葉だと思います。この時に見せる明るい笑顔もまた印象的です。2番以降の歌詞にも、やはり琴乃の心に残る傷跡の話が多く出てきますが、アニメでは歌われていない為ここまでの言及となります。ただ、現時点で自分が『The One and Only』に感じていることのほぼ全てはここにあると言えるでしょう。迷いない書きぶりの理由、月の光。


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ここまで読んでくださった方はありがとうございます。記事を書き始めた時に抱いていた『The One and Only』に対するふわふわとした認識は、いま自分の中で僅かに輪郭を帯びてきています。やはりこの歌の中心に居るのは琴乃なんだなと、琴乃が仲間と共に過ごしてきた時間、その過程で得たものが『The One and Only』であったのだと、そう思わずにはいられません。

以上

*1:アプリのメインストーリー、星見編第1章20話~25話