ギャン・バギャム・ソルドン

一打粉砕に怒喝の心力を込め、万物を叩き割る剛剣の刃を生み出さん

2023.8.26 アイカツオンパレードの話

かんまいちゃんのBDイベントで歌われたSHINING LINE*が想像以上に良くて、アイカツについてちゃんと考え直すべきだなという気持ちが高まったので、アイカツオンパレードの全話とアイカツ1年目と2年目を少しだけ見直しました。

アイカツオンパレードは…良いところもあるんだけど、このアニメのことを心の底から好きになることは絶対に無理…みたいな、自分とアイカツの間にある距離感を端的に表したようなアニメでした。良かったなと思った話数は主に7話,9話,22話,25話あたり。これは私がアイカツ1年目の「ドッキドキ!!スペシャルライブ」のことが大が付くくらい好きなのが主な原因ですが、主人公が自分の無力さを痛感するような話が好きというか、アイカツの世界観って思ったより描かれてる印象が無くて、入学して暫くアイカツしてたら(他のアイドルだって毎日アイカツをしているにも関わらず)いつの間にかトップアイドルの仲間入りをしているような世界になってると思うんですよ。で、そういう物語にいかに説得力を持たせば良いかと言うと、優しい世界観の中に主人公に厳しくしてくれるキャラクターを入れることだと思うんです。アイカツオンパレードの主人公である姫石らきに対して「あなたはまだまだそんなものじゃないでしょ」「それは本当にあなたの力なの?」と正面から言ってくれるキャラは神崎美月とエルザ・フォルテの2人ですが、この2人のおかげで物語が程よく締まっていたと思うし、姫石らきが成長していく話として多少の説得力を生んでいたと思います。あとは姫石らきちゃんが萌えキャラなのが良かったです。アニメで1番大切なのは物語ではなく萌えです。

そんな訳で姫石らきちゃんのことは結構好きだったので25話は凄く良かったです。25話はそれこそ憧れのSHINING LINE*の話をしている訳ですが、その語り口が「次の世代に繋ぐこと」の大事さを声高に叫んでいるので、まるで自分たちが長く続くアイドルの歴史のほんと一部分に過ぎないと自認しているような語り方だったのが印象的でした。本当に鬼滅の刃ばりに次に繋げ…!をやっててちょっと面白かったです。また菅野真衣さんが小島こころ役をやってるのがマ~~~ジで良くて、新人声優が新人声優っぽい発声/演技をするのはめちゃくちゃ大事と言うのと、アイプラの座長を務め上げた今見るから出る味があって良かったです。憧れのSHINING LINE*とは作中で、アイドルに憧れた少女が手を伸ばし、ステージに立ち、次世代の憧れになる時代の流れを指した言葉ですが、それに限らず、星宮いちごが、沢山のアイドルが現実の少女たちの憧れとなり、実際にアイドルになる人を生み出していることもまたSHINING LINE*なんだと思わざるを得ません。アイカツに限りませんが、やはり2010年代前半の女児アニメが今のエンタメ界に与えた影響は大きいんだなぁと実感します。

で、ちゃんと良くない話もしたい。今の自分は深夜アニメをそこそこ見る影響もあってアイカツのテンポ感がもう馴染まなかったり、画面に退屈さを感じてしまうのですが、これは不問としましょう。ですが個人的なアイカツに対する想いとして、物語が面白い/つまらない以前のアニメ制作に対するスタンスが気に入らないという気持ちがあります。「推し」という言葉が消費者ではなく売る側の人間のものになってしまっている現状を批判したツイートを先日見かけましたが、私がアイカツに対して抱いている気持ちとだいぶ似通っています。確かにアイカツ1年目の「フフッヒ」は良かった。木曜の夕方6時になった瞬間にTLが「フフッヒ」で埋まる光景は好きでした。でもそれを伝統だと言わんばかりにオンパレードでも擦られると非常に悲しくなります。ちょっと話は異なりますが崖登りだって斧だってそうです。あおいと蘭の待つスペシャルオーディションに出るために目の前の崖を登らざるを得なかったいちごの気持ちや、クラスメイトのユナちゃんに少しでも良いクリスマスを過ごしてもらいたい、と言ういちごの願いを汲み取らずに、崖登りと斧というトンチキな部分だけを切り取って定番にしてしまうことは、本当に良くないです。完全にやるなとは言いませんが、せめてそこにはお話としての必然さがあってほしいし、それが無いのなら物語として破綻していると言わざるを得ません。アイカツのそういう作劇は本当に良くないです。良くない…。

未来へのStarwayが面白い映画だったのと、菅野真衣さんのSHINING LINE*が良かったのでアイカツと完全和解の道もあるかなと思ったのですが、放送から10年経ったこのタイミングでしっかり「無理」と納得いくまで考えられたのは良かったです。アイカツほど好きで…やっぱり嫌いみたいなアニメはもうないと思うのでそういう距離感で付き合えたら良いんじゃないかな。てか新作あるのか…?