ギャン・バギャム・ソルドン

一打粉砕に怒喝の心力を込め、万物を叩き割る剛剣の刃を生み出さん

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

毎年恒例の企画に参加します。集計は今年もaninadoさんが行ってくれるそうです。感謝!

「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール
・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

掲載順は放送日の古い順です。

 

1. 冰剣の魔術師が世界を総べる 第5話『世界最強の魔術師である少年は、戦場で邂逅する』
脚本・絵コンテ:たかたまさひろ、演出:武藤信宏


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本作の主人公であるレイ=ホワイトの過去が明かされる回です。毎回OPのイントロを本編に被せたり、EDの中で次回予告をしたりと嬉しい演出が次々と繰り出されるアニメですが、この作品の魅力の根幹にあるのは、レイ=ホワイトというキャラクターの持つ悲しい過去と、周りに居てくれる人たちの優しさで溢れた物語にあるのではと、そんな気持ちを抱かせるアニメでした。レイに普通に、幸せに生きてほしいという大人たちの願いを想うと、そんな彼がこうして友達に囲まれながら学園生活を送っている今がどれだけ尊いことか...想像すると涙せずには居られません。戦場が生きる場所であった少年に幸多からんことを。

 

2. 人間不信の冒険者たちが世界を救うようです 第8話『麗しのパラディンさま』
脚本:小林亮介・いまざきいつき、絵コンテ:いまざきいつき、演出:Kim Eunbyeong


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2023年冬は小説家になろう出身のアニメが多いクールでしたが、人間不信はその独白の多さや画面の良さで異彩を放っていたアニメでした。そこからアゲートちゃん復活ライブの回を選んだのは、ずばり…アゲートちゃんが可愛かったからです。アイドルがギャンブルにハマったヒモの彼氏と縁を切る何気ないお話ですが、その語り口のどことなく寂しげな雰囲気と台詞の節々*1から真実味を感じられるような言葉のチョイスがお気に入りです。その素朴で寂しげなお話と、動きではなく構図で魅せる映像の相性がまた良くて、不思議と画面から目が離せなくなるアニメでした。

 

3. スキップとローファー Scene.02『そわそわ うろうろ』
脚本:篠塚智子、絵コンテ・演出:阿部ゆり子


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スキップとローファー第2話の、とりわけAパートのお話が胸に響きました。出会って2日足らずのクラスメイトと一緒にカラオケに行くお話です。顔を合わせてまだ日も浅い、お互いがどんな人物なのかも分からない状態で一緒の時間を過ごすと、人は時に居心地の悪さを感じてしまいますが、今どんなに仲の良い友人でも最初の出会いにはこの気まずさがあった、という気付きが何だかとても芯を食っているように思えました。少しだけ居心地の悪いこの空間の中に、もしかしたら生涯をかけて付き合っていく友人が居るの…かもという美津未の独白がとにかく未来を見ていて、良くて…。この作品の、人との巡り合いはこういう、自分が想像していた以上に親しくなる可能性を常に秘めているという描きぶりが暖かいなと感じた回でした。

 

4. 事情を知らない転校生がグイグイくる 第8話『浴衣とジャングルジムとギプス
脚本:沢木棲、絵コンテ:増田敏彦、演出:減辺千伽・木村佳嗣・鈴浦貴大・ハラダツルギ


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浴衣村さん…萌えすぎ。Aパートは中学校の文化祭に行く話で、Bパートでは高田くんが骨折するお話です。この一見関係の無いように見える2つのお話が、子供と大人というテーマで少しだけ繋がっているように感じました。高田くんのお母さんは大人の目線から子供の時の骨折なんて笑い話だと言いますが、中学生ですら大人に見えてしまう西村さんからするとそんな未来のことは全く想像できなくて、後悔の気持ちで一杯で…。きっと西村さんが高田くんのお母さんの言っていること理解するのは10年以上さきの出来事になるのでしょう。小学生を主人公にした本作が、しっかりと未来への眼差しを持っていることが何だかとても胸に沁みました。

 

5. 久保さんは僕を許さない 第11話『映画館と表情筋』
脚本:高橋悠也、絵コンテ・演出:沖田博文


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やっぱりアニメは…ラブコメですよね!。11話はサブタイトルの通り白石くんと久保さんが映画館デートに行く回です。30分を通して人混みの中に居る2人を捉えたオシャレな画面が多くて、とても見ごたえのある回だったと思います。白石くんの透明人間エピソードを連発していた頃に比べると、もう胸焼けするくらい甘酸っぱいです。でも萌えと甘酸っぱさは…あればあるほど良いですから。奥手ではあるけど久保さんを守ってあげたり、一緒に甘いコーヒーを飲んであげる白石くんの優しさが、格好よすぎなくて、丁度よく感じました。微笑ましい2人のやりとりをずっと見ていたくなったこの作品に、2023年ベストラブコメ賞を贈呈したいです。

 

6. AIの遺電子 #06『ロボット』
脚本:金月龍之介、絵コンテ:川尻善昭、演出:中野彰子・Yang jeong-hee


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産業用のAIロボットが学習のために人間と少しのあいだ生活を共にする回です。過去の人間が自分たちの営みを映像や音に記録してきたのと同様に、人の培ってきた技術をロボットに記録して未来に伝えていくというお話の根幹が既に面白くて、発想の勝利だなの気持ちがありました。ロボットの成長速度には凄まじいものがあります。ですがそれを超えて、より良い物を作っていくのは人間なんだと、この熱のこもった心だけはロボットにも記録できないんだと描いた瞬間の力強さが良かったです。AIの遺伝子の物語に惹かれたのは、そこで描かれる未来や人間がしっかりと現在の延長線上にあるように感じられたのが大きかったです。

 

7. BanG Dream! It's MyGO!!!!! #7『今日のライブが終わっても』
脚本:綾奈ゆにこ、絵コンテ・演出:梅津朋美


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2023年は全編3DCGのアニメーションがここまで萌えとキャラクターの感情の機微を表現できるんだという驚きに満ちた*2年でした。ライブシーンなど見どころの多いこの作品から第7話を選んだ訳は、豊川祥子さんの中に芽生えた気持ちにどうしようもなく思いを馳せてしまうからです。春日影を聞いて何かが、何かが壊れてしまいました。あなたは私に春を教えてくれた、暖かくて、美しくて、高潔で…大切な人。そんな言葉を聞いている今の自分は何も持っていなくて、惨めで、悲しくて、聞いていられなくて。ずっとずっと放さないでいて…という叫び声が虚空に消えていきます。音楽と映像が緻密に結び付いて別れを、もうあの頃には戻れないと物語ります。God Animation。

 

8. 暴食のベルセルク #03『ロキシーの視察』
脚本:國澤真理子、絵コンテ:鎌仲史陽、演出:村山靖


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普段はキリッとしているロキシー様が突然萌え萌えの田舎娘になって、聖騎士の身分を隠してフェイと秘密のデートに出かける回。何の変哲もないデート回ではあるものの、素朴で何気ない日常が2人にとってはとても大切で、掛け替えないんだということが伝わる良いお話です。萌えと青春がたっぷり詰まっています。一般にラブコメアニメには該当しなさそうな作品ですが、年頃の男女の間に芽生えるドキドキをまっすぐ描いてくれて嬉しい気持ちになりました。暴食のベルセルクという作品において、ロキシー様の持つ気高さと可愛さの両方を描くことはとても大切だったのではと思います。

 

9. 僕らの雨いろプロトコル 第9話『崩れる萌(きざし)-Latch Up-』
脚本:高山カツヒコ、絵コンテ:ワタナベシンイチ、演出:安藤貴史


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僕らの雨いろプロトコルは2023年秋クールで最も面白いアニメでした。第9話は妹を事故に遭わせてしまった罪悪感に苛まれる兄と、そんな兄の優しさを手放したくない妹が衝突する回です。気持ちでお互いをガチガチに縛り合ってきた兄妹の鎖が、物語の重力によって徐々にちぎれていきます。望と悠宇がお茶を入れている姿を床から見上げることしか出来ない美桜と、家庭を支える為に沢山のことを抱え込んでしまう瞬の2人が、言葉を選ばずにいえば可哀想に思えました。身も心もボロボロになって風呂場で抱き合う兄妹がどうにか、どうにか幸せになってほしいと願わずには居られませんでした。

 

10. 川越ボーイズ・シング menu9『いつかのアイムソーリー』
脚本・絵コンテ・演出・作画監督・原画:竹内宣之


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ITくんがボーイズ・クワイア部を辞める回です。急にやってきてはそこにあったものを薙ぎ倒して去っていく、嵐のような視聴感だったと言わざるを得ません。子供の立場ではどうすることも出来ないITくんの悲愴と暗めの色彩、環境音がいつもとはひと味違うテイストであると訴えます。口元を敢えて映さない構図の大胆さと、歌っているか、声が出ているかを聞こえてくる音とその場の雰囲気で判断させるアニメーションのセンスに痺れました。哀愁のある中に少しだけ救われたような気持ちが混ざったITくんの絶妙な表情が切なくて…綺麗で。別れの歌には明るいメロディーとクサい詩が似合います。Hello Goodbye 友情は Forever…。

 

総評など

2023年も私なりにアニメを見られたと思います。今年の選評を振り返ると、画面に力が入ったお話と悲しさを感じるお話をよく選んでいる気がします。歳ですかね。来年もちゃんとアニメを見たいです。
以下、選外となったもの。気分次第では全然10選に入っていたと思いますが、その時の気分は結構大事なので上の10本で決まりとしましょう。

(冬)解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ 6話
(冬)HIGH CARD 7話
(春)異世界召喚は二度目です 1話
(春)転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 9話
(春)異世界ワンターンキル姉さん〜姉同伴の異世界生活はじめました 11話
(春)アリス・ギア・アイギス Expansion 12話
(夏)好きな子がめがねを忘れた 9話
(夏)英雄教室 10話
(秋)陰の実力者になりたくて! 2nd season 8話
(秋)16bitセンセーション ANOTHER LAYER Layer8

*1:「悩みなんて、そんなもの…あるのが当たり前じゃないですか。人間なんだから。」等

*2:アイドルマスター ミリオンライブも素晴らしい全編3DCGのアニメでした。