ギャン・バギャム・ソルドン

一打粉砕に怒喝の心力を込め、万物を叩き割る剛剣の刃を生み出さん

大人になった私たちへ 【魔女見習いを探して 感想】

11月15日、やっと公開を迎えた『魔女見習いを探して』を見てきました。本当に、本当に素晴らしかった。私がおジャ魔女どれみを好きになってから約10年が経ちます。今では細々とファンを続けるに留まっていますが、少なくとも私から見た『魔女見習いを探して』は間違いなくおジャ魔女どれみの映画でした。

音楽はほぼ当時のまま使われており、特にEDの終わらない物語は反則と言いたくなる程にボロボロに泣きました。『どれみのはづきの大げんか』を見てミレが仲直りを決意するシーンや、三年坂などのマニアックな聖地が多く登場したりと、ひたすらファン冥利に尽きるシーンの連続でした。

ですが何よりも、映画の内容が幼少期をおジャ魔女どれみと共にして、大人になった私達に向けてのものだったのが、ここまで私を惹きつけた理由なのだと思います。

 

・大人にしかできないことを

この作品のテーマを端的に表すなら『子供には出来ないけど、大人にはこんな事が出来る』だと思います。おジャ魔女どれみでは、どれみ達が魔法の力に頼らずに様々な事件を解決してきましたが、どうしても魔法に頼らなければならない場面もありました。それが旅、もとい長距離の移動です。あいちゃんを応援しに大阪に行くのも、サイクリングをする小竹達を追いかけるのも、自分の足ではなく魔法の箒に乗ってでした。こればっかりは子供の力ではどうにも出来ません。

一方で『魔女見習いを探して』では、そういう旅や移動を全て自分の力、自分で働いて稼いだお金の力で解決します。ミレがレイカに会う為に突発的に広島に行くのも、白川郷や京都を旅するのも、彼女達の行動力や経済力あってこそです。どれみ達が魔法を使ってでしか出来なかったことが、大人になった私達には出来ます。色んな場所を旅して、人と出会う。これは大人だけが持てる特権です。

劇中では頻繁にお酒を飲むシーンが登場します。居酒屋は勿論、電車での移動中や宿舎でも飲みまくりです。ベロベロに酔っ払ったり、仕事やプライベートの愚痴を聞いてもらうことは人に拠っては無くてはならない時間ですし、何よりも楽しいです。お酒も旅と同様に大人だけが楽しめる特権のように描かれています。

おジャ魔女どれみが『子供の持つ力』を描いているとしたら、魔女見習いを探しては逆に『大人の持つ力』を描いています。私はこの対比構造がとても好きです。子供の頃はもっと自由だった、色んなことが出来た。そう思うことは私にも偶にありますし、恐らく私以外にも多くの人が抱える普遍的な感情だと思います。ですが、大人にならないと出来ないことも沢山ある訳です。『魔女見習いを探して』という作品は、大人にしか味わうことの出来ない喜びをこれでもかと描いた作品だなと思います。そして当たり前ですが、おジャ魔女どれみを作ったスタッフさん達は、20年経っても私達の人生の先輩なのだなと強く感じました。

素晴らしい作品をありがとうございます。2回目も見ようと思います。